ニーズとウォンツの違い
マーケティングでは、ユーザーの「欲しい」という気持ちを、2つに分類します。それは「ニーズ」と「ウォンツ」です。一度は聞かれたこともあるのでしないでしょうか?
しかし聞いたことはあっても、具体的な細かい違うが分からない方も多くいらっしゃいます。「ニーズ」と「ウォンツ」の違いは、ホームページから集客をするなら、きちんと知っておきたいところです。
そこで本記事では、「ニーズ」と「ウォンツ」という重要なマーケティング用語の違いを
説明します。
ドリルではなく穴が欲しい

マーケティングにおける格言の一つに「ドリルを買う人は、ドリルが欲しいのではなく穴を空けたいのだ」というものがあります。
これは、セオドア・レビットというマーケティング学者が著書の中で発表した格言です。
この言葉の意味することは、「同じ”欲しい”という言葉でも、『手段としての欲しい』と
『目的としての欲しい』がある」ということです。
上の例で言えば、顧客はドリルを買いに来ましたが、そもそも穴を空ける必要がなければドリルは必要ありません。この場合、ドリルは手段として欲しい商品、穴は目的として欲しい商品となります。
このような例はあちらこちらに見られます。
例えば、結婚したり子供ができたりした夫婦が、保険に入ったり持ち家を購入したりするのは、それ自体を購入したいからではありません。幸せな家族生活を送ったりいざというときに家族の生活を守ったりするためです。
企業がホームページを作るのは、ホームページそれ自体が必要なわけではありません。ホームページを作って問合せを発生させ、注文を増やして売り上げを拡大したいからです。
ホームページは、注文を増やして売上を拡大するための「手段として欲しい」 ということになります。
このような「欲しい」の違いはマーケティングにおいてとても重要です。
マーケターが気を付けるべきニーズとウォンツの違い

上記の「目的として欲しい」はマーケティング用語では「ニーズ」、「手段として欲しい」は「ウォンツ」と呼ばれています。
同じ欲しいでもマーケティング用語として区別されているのは、ニーズとウォンツを取り違えればマーケティングとして失策を招きやすいからです。
ウォンツは代替可能、ニーズは代替不可能
ウォンツは代替可能ですが、ニーズは代替不可能です。
先ほどドリルと穴の例で説明すると、ドリルは穴を空けるための手段なので他にもっと良い手段があればそちらの提案が優先される可能性があります。
例えば、大工さんが家に訪問してくれてドリルで穴をあけてくれるならばそちらの方が楽でしょうし、はじめから穴が空けられた板が販売されているならそちらを購入した方が安上がりです。
つまり、ドリルを欲しいと言っている人は、ドリル以外にもっと良い提案があれば乗り換えることは可能なのです。
一方で、穴が欲しいというニーズは、どのような提案でも代替することができません。
大工さんが訪問して穴を空けてくれる場合も、はじめから穴が空いた板を買う場合でも結局、穴が空いていなければ目的を達成することはできません。
ウォンツは価格競争に、ニーズは価格競争回避に
また、ウォンツに焦点を当てたアプローチは価格競争になりやすく、ニーズに焦点を当てたアプローチは競合のいないサービスに繋がっています。
ウォンツはすでに顕在化しているニーズです。
すでに欲しいものが決まっているとき、最も重要になりやすいのが価格です。そのため、ウォンツを満たそうとすると、価格競争になりがちです。
一方で、その背後にあるニーズを満たせれば価格競争を回避できます。
例えば、家を買いに来た人に対して間取りや広さや価格など、すでにユーザーが考えている情報をもとに物件を提案すれば、他の不動産会社が紹介した物件とどちらが良いか比較の問題となります。
しかし、その家族に小さい子供がいたとして、子育てに向いている家という観点から物件を紹介すれば単純な比較の問題ではなくなります。
子供が元気に育つということが家族にとっては目的として欲しいことであり、子供が元気に育つなら親は少し高い家でも良いと考えるからです。
ウォンツは調査可能、ニーズは調査困難
また、ウォンツは調査がしやすいのに対して、ニーズは調査が困難です。
例えば、向こう3か月に携帯電話を機種変更したいというウォンツはアンケートなどですぐに調査することが可能でしょう。
しかし、ニーズは簡単には調査できません。実際にどの携帯電話に機種変更するかは携帯のカタログを比較したり、実機を触ったりして、消費者が自分のニーズを明確にしないと決まらないでしょう。よって、ニーズに関するアンケートの精度は低くなります。
例えば、アンケートでは充電が長持ちする携帯電話を買いたいと答えていても、実際には最新のデザインが良い機種を買いたくなるかもしれません。
また、スマホが普及したように、ガラケー全盛期にいきなりスマホという誰も想定していなかった新しいデバイスが発表されてから自分のニーズに気づくということもあります。
ウォンツはユーザーが自覚できるのに対して、新しいニーズはユーザー自身が自覚することが困難のため、調査をしても上手くいかないことが多いのです。
「ニーズ」とクリエイティブ

特にマーケティングを行う際にはチラシやホームページなどのクリエイティブ(=原稿)がきちんと「ニーズ」を抑えているかを注意しなければなりません。
例えば、ダイエット食品の場合、競合商品と比較してどのように優れているか「ウォンツ」の部分を明確にすることは大切です。
そのために、競合と比較してどのような健康に良い成分が入っているのか、競合製品と比較してどの位安いのかなどを説明する必要があります。
しかし、ユーザーの本質的なニーズは「痩せたい」「食事制限でつらい思いをしたくない」ことです。
よって、ただ他のダイエット食品とどのように違うのかだけではなく、商品写真を美味しそうに撮影したり、ダイエットしている人が憧れそうなスタイルの良いモデルを起用することも同じく重要でしょう。
商品について詳しくなってくるとどうしてもすでに顕在化しているウォンツをベースにクリエイティブを制作しがちですが、ウォンツで競合と差別化する前提としてユーザーのニーズをきちんと掴んでおく必要があります。
プロ向けや企業間取引の場合はユーザー自身が自分の持っているニーズを把握していることが多いので、ウォンツだけでも良いかもしれません。
しかし、素人を相手にするBtoC系のビジネスの場合は顧客が自分が抱えている潜在的なニーズに気づいていないことが多いので、こちらからユーザーからニーズを引き出す必要があります。
クリエイティブを制作する際には想定する顧客のニーズがぶれないようにマーケティングをする人がきちんと管理する必要があります。
「ニーズ」と「ウォンツ」の違いのまとめ

以上のように「ニーズ」と「ウォンツ」の違いについて説明してきました。この2つは単に別のマーケティング用語であるというだけではなく、混同しないようにきちんと区別する必要があります。
よく、マーケターの資質の1つに消費者目線で考えるということが挙げられます。これは消費者のニーズについてきちんとマーケターは知っておかなければならないということです。
商品に詳しくなっていくと段々ウォンツの違いに注目するようになります。
あの商品は「この機能があの価格でついている」「この機械をここまでコンパクト化するのは技術的に凄い」などメーカーの玄人の目線でウォンツを比較して商品を分析してしまいます。
しかし、本当にマーケターが知っておくべきは素人である消費者が何を考えているかということです。
たとえば、理髪店が散髪に行きたいというウォンツに注目してカットの美しさや散髪技術を競っていても一部の美意識の高い顧客の取り合いになるだけです。
短い時間で安く散髪したい、顔そりやシャンプーは別になくても良いという顧客のニーズに気づいたからQBハウスは理容業界で急成長したのです。
ニーズとウォンツの違いを意識した上で、ユーザーのニーズをきちんと汲み取り、想定するニーズから商品・サービスや販促物がぶれないよう管理していきましょう。