ビジネスブログは、一般個人顧客の集客のみならず、顧客としての企業を集める、いわゆるBtoBの取引においても効果を発揮する。
コスト削減が叫ばれる昨今、少しでも安くて質の高い仕入れをしたいと考える大企業が増えているが、これは、中小企業にとって大企業と新規取引を始めるチャンスでもある。
今回は、ネットを活用した大企業との取引開拓の可能性について考えてみたい。
変わってきた大企業の仕入れマインド
「大手企業との取引のきっかけをつかむために、何かよい方法はないでしょうか」
WEBマーケティングコンサルタントの仕事をしていると、中小企業の経営者からこんな相談を受けることが少なくない。
営業マンがいきなり大企業に飛び込み営業しても、十中八~九は門前払い。電話営業してみても、担当者に電話をつないでもらえない場合がほとんど、というわけだ。
どんなにすばらしい技術やサービスを有していたとしても、取引実績がない無名の中小企業が、新たに大企業との取引を開始するのは至難の業である。
ところが大企業においても、近年の景気悪化に伴い、より低コストで競争力のある製品やサービスを投入しないと、市場で生き残れなくなってきたという事情もあり、そのため原価を引き下げて、より高品質な製品を開発するよう、担当者に大きなプレッシャーがかけられている。
こうして行なわれているのが、仕入先の見直しである。
従来よりも低コストで高品質な製品を提供するのに役立つのであれば、今まで取引のなかった無名の中小企業も仕入先の候補に挙げようと担当者は考えるのだ。
その際、新しい仕入先を探し出すのに利用されるのがネットである。
したがって、大企業の担当者が検索した際にヒットするホームページを用意すれば、中小企業でも大企業と取引を開始できる可能性が出てくる。
大企業がアプローチしてくるホームページ
とはいえ、ホームページさえあれば大企業が取引してくれるわけではない。
自社の製品やサービスを、きちんとアピールできるホームページを用意しよう。大企業の担当者が抱えている課題を解決できることを、ホームページで伝えるのだ。
大企業の担当者が、従来の製品にない何を求めているかは、各業界の状況によっておよそ検討がつくだろう。
たとえば、より高い強度の部品を探していると想定するならば、ホームページで、自社の部品がいかに高い強度を実現できるかをわかりやすく伝えよう。
単にカタログのスペックを掲載するだけではだめだ。
どんな強度検査を行なったか、他社での導入事例ではどんな評価を受けたかなど、担当者を納得させる情報を提供しよう。
また、企業としての信頼感をアピールする情報をホームページに掲載することも重要である。
たとえば、「会社所在地」「代表者プロフィール」「納入実績」「工場諸元」「取得済み許認可」「ISO認証」「主要取引先」など。
簡単に言えば、大企業の担当者が社内で稟議を回すときに必要な情報をもれなくホームページに掲載する、というイメージだ。
稟議に必要な情報がホームページに網羅されている企業と、必要な情報がほとんど掲載されていない企業があれば、どちらに問い合わせをしたくなるか、答えは明白だろう。
大企業からの引き合いがわずか2ヵ月で!
ホームページの活用によって大企業からの受注に成功した中小企業の事例を紹介しよう。
ホームページ立ち上げ後わずか2ヵ月で大企業からの引き合いがあった大阪の精密切断機メーカーである。
同社は、一般消費者にはほとんど知られていない「精密切断機」「試料切断機」などと呼ばれる機械を製造する、極めてニッチな分野のメーカーだ。
また、業界では後発で認知度も低かったため、高い技術力があるにもかかわらず、ライバル企業との競争に勝てず、取引先を開拓できないという悩みを抱えていた。
そこで、まずは業界での認知度アップを目的にホームページを立ち上げようと考え、今年3月に初めて、ビジネスブログを利用してホームページを開設した。
その後は自社でコツコツと更新を重ねていくうちにホームページのコンテンツが充実し、検索エンジンでも上位に表示されるようになった。そして4月には、問い合わせ件数が今までの3倍へと急増。
現在同社では、受注の6割がホームページ経由であり、引き合い案件にいたっては9割以上がホームページによる。
なかには、海外の日系企業、教育機関などからの引き合いもあり、さらに、最近は大手重工メーカーからの正式受注も獲得したという。
同社のホームページには、画像や動画などを活用しながら製品や技術についての情報が非常に詳しく紹介されている。加えて、企業情報をきちんと掲載することにより、信頼感を与えることに成功している。
これらの充実した情報提供が、大手企業との取引につながったといえるだろう。
ニッチ分野ほど有利なホームページ営業
同社がホームページを介して新規顧客を開拓した成功要因の一つに、非常にニッチな分野の業種であるということが挙げられる。じっさい、ネットの世界での営業はニッチな業種ほど有利なのだ。
ニッチ分野はライバル企業の数が少なく、しかも他社がネット活用に本腰を入れていないような場合、独り勝ちできる可能性もきわめて高くなる。
当社の実績を見ても、ホームページを立ち上げた「だけ」で、あっという間に大企業との取引に成功した事例もあるほどだ。
扱い分野がどんなにニッチで、地方にある小さな企業であっても、それは関係ない。
どちらかというと敷居を高く感じがちな大企業との取引開拓も、ホームページ上で必要な情報提供を行なうことによって十分に可能性が増す。
ビジネスブログは、企業間取引においても見込み客開拓に大いに活躍するツールである。
(この記事は、ダイヤモンド・オンラインへ寄稿したものです。)